技術本部長インタビュー
光技術が切り開く未来への道筋
Member profile

小髙大樹
プロフィール
ウシオ電機株式会社 技術本部長。ウシオ電機入社後は光配向用偏光子の開発を主導し、QCDの改善とともに新たな技術基盤を築いた。海外グループ会社であるウシオヨーロッパの社長を務めた経験も持つ。
入社前は大手フィルムメーカーや新たな挑戦を求めてベンチャー企業での勤務経験もある。工学系研究科博士課程修了。
概要
産業用光源のパイオニアとして培った技術を基盤に、新たな技術領域への挑戦を続けているウシオ電機。AI時代の到来とともに、光技術への注目が高まっている今、ウシオ電機の技術本部長 小髙大樹氏が、ウシオ電機のビジネスの未来と技術者に求められる視点について語りました。
無限の組み合わせが生む新たな価値
——まず、ウシオ電機の核となる「光」という事業フィールドについて教えてください。

小髙氏
光と一口に言っても、私たちが普段認識している可視光以外にも、赤外線、紫外線、X線など非常に幅広い領域があります。ウシオ電機では、そのようなさまざまな光の特性を利用して、産業用途で強みを発揮する事業を展開しています。
もともとウシオ電機の事業は、ランプから始まりました。今ではこの分野は、かなり成熟し、レーザーやLEDといった後発の光源にも置き換えられる場面もあります。しかし、それらの光源では実現できない領域があるのも事実。これまでの文脈から乖離したものを一からつくるのではなく、これまで培ってきた確固たる技術基盤をベースに新たな技術を組み合わせて事業拡大していく。それがウシオ電機のスタイルです。
——たとえば、どのようなアプローチで事業拡大していくのでしょうか。

小髙氏
光は基本的にエネルギー源なので、さまざまな材料と相互作用を起こします。光源と材料のマッチング、そして条件を変えることで、組み合わせは無限に広がり、発生する現象も多岐に渡ります。
その結果、新しい機能を発現させたり、コストを下げたりすることが可能になります。この多様な組み合わせによって生じる現象を科学的に理解し、産業的に有用なものへと転換するのがひとつのアプローチです。
——世の中が変わりつつある中、光技術にはどのような期待が寄せられているのでしょうか。

小髙氏
これからの時代、AIが社会やビジネスに欠かせない存在になっていくのは間違いありませんが、無視できないのは電力の問題です。AIが電力を大量消費する中で、半導体パッケージの見直しや電気から光の通信に変更することでエネルギーを大幅に抑制できる可能性があります。AIが社会に広がり有用なものになるには、そうした基盤インフラの進歩が必須で、そこで様々な形で光の技術が求められるのです。パッケージや通信用レーザーの製造において、露光装置を始めとしたウシオの製品は競争力を持っています。

ウシオ電機の技術者として働く醍醐味
——ウシオ電機の技術者に求められることについて教えてください。

小髙氏
大学のような研究機関は、新たな技術シーズを産み出すことが役割の一つですが、企業はそれでは成り立ちません。技術をいかに市場のニーズと結びつけられるか。それがこれからのウシオ電機のビジネスで求められること。技術者であっても、お客様が何を求めているかを理解することは極めて重要です。
技術は使われてこそ価値があります。どれだけすごい技術でも、コストが100倍以上になってしまっては誰も使いません。スマートフォンが普及したのも、手の届く価格になったから。純粋な知的欲求だけを満足させるのではなく、いかに世の中に実装し、実際に役立つものとして出していけるかを意識してもらえたらと思います。
——そうした実用性を追求する上で、技術者にはどのような姿勢が必要でしょうか。

小髙氏
技術者には難しいバランスが求められます。差別化のために専門知識や技術を深く掘り下げる一方で、「社会で使われる」という視点では広く外を見る必要がある。このズームイン・ズームアウトの使い分けが要になります。
前者の専門性の深掘りは技術者が得意とする一方で、同時に視野を広げて社会を見つめるのはなかなか難しい。そこには、研究開発活動以外でもさまざまな経験が有用です。理屈で分かる世界と実際に経験する世界の違いに苦戦することもあるでしょう。でも、自分の技術を磨いて社会に問うていくのは、とても刺激的な作業です。
技術の先端に立ちながらも、社会の前線で価値を生み出していく。確かに難しい挑戦ですが、それこそが技術者としての醍醐味であり、楽しさに満ちた研究開発だと考えています。

計画的な人材育成でキャリアをサポート
——技術シーズと市場ニーズを結びつける上で、技術者にはどのような能力が求められるのでしょうか。

小髙氏
技術者の価値のひとつは「なぜそういう現象が起こるのか」「どの程度の性能が出せるのか」を定量的に説明できること。AIが発達していく中で一足飛びに答えのようなものに辿り着きやすくなっていますが、その中身はブラックボックスそのもの。「なぜその答えなのか」「その答えはどれほど妥当なのか」、正しく理解して説明できることの価値がますます高まってきます。ウシオ電機の技術者には、最低限そのような能力を持ってほしいと思いますね。
——技術者のキャリアステップについてはどのような取り組みをされていますか。

小髙氏
今年から技術者のキャリアアップを実現するためにスキルの管理のスキームを整理しました。技術者のスキルを全社共通の言葉で定義し、「現在のスキル」と「将来身につけるべきスキル」を評価しながら計画的に部署移動や育成を行うのです。
たとえば、個人の特性や「こういうエンジニアになりたい」という意向を把握した上で、「それならば、こういうスキルをもう少し高めていこう」とサポートできるようになりました。
——技術者としてキャリアを築く上で、ウシオ電機ならではのメリットはどのようなところにあると思いますか。

小髙氏
当社の規模は、新しい分野への挑戦やビジネス拡大において理想的です。あまりに組織規模が大きすぎると担当範囲が細分化されがちですが、当社では比較的広い分野を担当できます。その分、視野も広がりますし、新たなアイデアも発想しやすくなると考えています。自分のアイデアをかたちにして、ビジネスをつくっていくチャンスがあちこちにある環境だと言えるでしょう。
——最後に、技術者を目指す方へメッセージをお願いします。

小髙氏
冒頭に述べたようにAIの基盤インフラで我々の技術が使われているなど、ウシオ電機は社会の最先端の一翼を担っているという自負があります。そうした最先端分野に関わりたい方にとって、やりがいのある環境だと思います。
光はさまざまな産業用途に応用できる可能性がある物理現象。その技術をアップデートすることができれば、それぞれの産業分野がさらに発展し、社会をより豊かにすることができます。そんな技術の最前線で、自分のアイデアをかたちにしてくれる仲間に出会えることを楽しみにしています。
